Twitterを見ていたら釣った魚をオークションに出品できるウェブサービスが4月から可動するという記事が話題になっていた。
釣った魚を気軽に出品!全国の鮮魚をオークションで売買「Fish Sale(フィッシュセール)」4月1日(月)サービススタート!- 記事詳細|Infoseekニュース
これを見て、ちょっとやばそうな気がしているのでそのことについて書いてみる。
釣った場所を捏造出来そう
釣り人が釣ってきた魚ということで、正直信用のおける人間ではない人が魚を出品出来てしまうのが怖い。
市場とかなら誰がどの海で取ってきた魚だということが大体わかるわけだが、釣り人が釣ってオークションに出す場合はその釣り人が産地偽装をしても本当なのかわからないだろう。
シーバス(スズキ)などは隅田川のような都心のドブ川でもよく釣れる魚で、大阪でもこんな汚れきった臭い川で釣れるのかよって場所でよく釣れている。
そんな通常考えて食べるのに適さない海域で取った魚を売る時に、印象が悪いから本当は京浜運河の工場地帯のドブ川で釣ったんだけど千葉県沖にしとこうかなとか太平洋とかにしとこうって出品する人がいるかも知れない。
以前、京浜運河(東扇島)で釣ったシーバスを焼いて食ってみたことがあるのだが、誰でもわかるレベルでナフタレンみたいな化学のニオイが強烈で食えたものじゃなかった。銀ピカで美味しそうなシーバスでもそのレベルである。もちろん食べ方次第ではニオイが気にならないように出来るだろうがそれでも生物濃縮で化学薬品の蓄積した魚を食べてしまって体にいいはずがないと感じる。
うち(尼崎)の近所のドブ川でもチヌがよく釣れていて、結構持って帰って食べている人も多いが、正直近所に住んでいる人間としては、絶対口にしたくないというのが本音である。ドブ川に居着いているチヌなど尼崎の工場地帯が垂れ流してきたヘドロに生息するカニや貝を主食としているわけで確実になんかヤバイ気しかしない。豊洲問題もあったが、過去には環境に悪い化学薬品が大量に投棄され続けてきているのはわかりきっている。
過去には江戸川河口などで基準値を超える放射性セシウムが検出されたりしている。こういった魚が流通してしまう可能性もあるのだ。
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というわけで、1つ目は産地偽装により食べるのに適さない地域で取られた魚が流通してしまうリスクが問題。
毒魚が混入する可能性
釣りをしていると時々毒魚が釣れる。ハオコゼやゴンズイなどヒレに毒がある魚、フグなど内蔵や全身に毒がある魚もいる。
ソウシハギなど以前問題になったが、カワハギと見分けがつかずに食べてしまう人もいるかも知れないというリスクがある。
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更に、シガテラ毒という南方の魚に見られる毒があり、これは毒性のあるプランクトンを食べた魚が毒を持ってしまうというもので、普通に流通する美味しいと言われている魚ですら毒魚になる可能性を秘めている。ブリやヒラマサでもシガテラ毒による中毒事例があるので油断できない恐ろしさがある。
そういった毒魚の流通に関して誰が責任をもつのかというのが2つ目の問題である。毒魚の知識が乏しい釣り人が危険な魚を出品してしまった場合、毒針で怪我をした人が出てもおかしくないし、食中毒で亡くなる人がでてしまったらどうなるのだろうか?
魚を釣りすぎる問題
今の堤防で釣りをしている人は、自分で消費できないレベルの魚が釣れても持って帰らずに海に逃がすのが普通で、よくおじさんがサビキ釣りをしながら「これ以上釣ったら嫁さんに怒られるからもう今日はこれぐらいで帰るよ」って言って帰っていく姿がある。
もし、売れるとなるとそういう歯止めが効かずに全力で釣りまくり、大型のクーラーボックスが一杯になるまで釣り尽くすだろう。
私の場合もガシラはトゲが多くて捌きづらいのでたくさん釣れても一番大きい奴ぐらいしか持って帰らない。だが、ガシラはスーパーで買うと一匹500円もする中々の高級魚で、売る分にはかなり美味しい魚と言える。
釣りでは簡単によく釣れるガシラなので、必死でつれば流通サイズを一日10匹ぐらい釣れるかもしれないし、小型なら100匹ぐらい釣れそうな気がする。もし売れそうだと思って小型まで全部家に持ち帰ってしまう人が増えた場合、資源があっという間に枯渇してしまうだろう。根魚系は移動距離も短く、釣り尽くしたら回復するまでに長い年月が必要となってしまう。
釣り人が魚を売ることにより、海があっという間に釣れない釣り場になってしまうリスクが3つ目である。
ルールを破って釣りをする
魚が売れるとなれば、釣りで稼いで副収入を得ようとする人が増えると考えるのが妥当で、これまでは自分で食べる分だけ釣っていれば満足だった人が、急に目の色を変えて必死で釣りをするようになる可能性がある。
私など、チヌは常に1時間から2時間で釣れてくれる魚なのでとりあえずなんか釣りたい時にサクッと釣って1〜2匹釣れれば満足ということですぐに帰るのだが、もし副収入を得ようと考えているなら一日5匹は釣らないと帰れないと必死で釣り、一晩中釣ったりするかもしれない。
それが行き過ぎると禁猟区に入って密漁する人や、釣り禁止の場所が釣れるからと金網を切り裂いて侵入し逮捕される人が続出する可能性があるだろう。
ニジマスの管理釣り場ではクーラーボックスを皆が持ち込み必死で釣りまくる可能性があるし、ルールを破ってルアーに餌を付けて投げる輩もでてきそうである。魚の匹数制限はあるが、こっそりトイレに行くふりをして釣れた魚を車に持っていったりしたら気づかない可能性も高い。
こういう金に目がくらんでしまった釣り人がルール違反を犯すことにより、管理釣り場は運営費がかさんで値上げを余儀なくされたり、今まで釣りができた場所までが釣り禁止になってしまう危険性もある。
漁師が黙ってない問題
上にも書いたが、ルール違反で禁漁区で釣りをする人が増えたり、プレジャーボートで釣りに行き漁業の邪魔をしながら必死で魚を釣るなどの違法行為が増える危険性もある。
今でも琵琶湖でエリの近くは禁漁なのに知らずに釣りをしている人がかなりいる状態だが、必死で魚を追い求める人が増えれば本業の漁師と釣り人が魚を奪い合うという形になる可能性がある。
そうなった場合、これまで黙認だった漁港での釣りが全面禁止になる可能性も高く、釣り人の居場所がどんどん減っていくだろう。漁師を敵に回していいことなどなにもないのである。
まとめ
釣った魚をオークションで売るというのは誰でも思いつきそうな案だ。ただ、釣り人の視点から考えると相当多くの問題が浮き上がってくる。